切れないハンドル

お酒と結婚したいアラサー女は今日もまっすぐ歩けない

私達の女子会

小学生の頃からずっと共に意識低い系として歩んできた友人が、最近意識高い系の職に就き更になにやらIT系の資格を取るとか言い出したので、私は意地になってとことん意識低い系を極めてやろうと心に決めた。

裏切り者め。サブカル真面目系クズとしてスイーツ叩きをしていたあなたは何処へ行ったんだ!
 
最近の感度が高いオシャレピーポーにとってはスタバはとっくにダサくて、今は敢えて昭和からやってそうな埃を被ってそうな雑居ビルにある喫茶店に行くのがオシャレらしい。どーせそこで三島由紀夫とか読むんだろ。でっかいヘッドホンで電気グルーヴとか聞いてるんだろ。
とか、まぁ勝手にレッテル貼りして誹謗中傷まがいのことをします。かつて思いっきりサブカル系だった人間が未だにサブカル趣味が抜けなくて、でもサブカル系だと思われたくないがゆえの同族嫌悪みたいなもんです。すみません。
 
そしてクラゲについての話題になった。ナントカっていうクラゲは一定以上傷を負うとリセットされて子供に戻ってしまうとか。なにそのループもの!!記憶は!?ループ時に記憶は保持できるの!?と大興奮でした。
ちなみに私がゴリラについて語ったら「そこまで力説されても全くゴリラに興味わかないわ」としょっぱいリアクションをされました。ちぇっ。
 
千鳥足で赤提灯になだれ込んだのだけど、1軒目の沖縄料理屋で飲んだ泡盛がじわじわ効いてきて脳があやふやになる私たち。
「こないだアレ食べたんだけどさ」
「なにを」
「あの牛肉のやつ」
「牛肉のなに」
「あの薄く切ってあって中が半生のやつ」
「あぁ〜多分わかった」
「なんて名前だっけ」
「なんだっけ…あのアレでしょ、外は焼いてあって中が赤いやつ」
「そうそう合ってる合ってる」
「ビーフなんとか…」
「そうだ。ビーフ…ビーフなんとか…」
「クリスマスに食べるやつだよね」
「そうそうあのビュッフェで行列できるやつ」
「あー絶対たいした名前じゃないのに!」
「忘れるような名前じゃないはずだよね…ビーフなんとか…」
「ビーフ…」
「ビーフストロガノフしか出てこねぇ…」
「……」
「………」
「…ああぁぁあ!脳細胞が死んでゆく!」
「だめだ!早くググって!」
ググるわ…ちょっと待ってね…あ!わかったこれだ!」
「ちょっと待って!言わないで!最初の一文字だけ教えて!」
「ロ。」
「…ロォォォォストビィィィィィフかぁぁぁぁ!!!」
「ローストビーフ!」
「ローストビーフ!!」
完全にババアの会話である。ちなみに最初ローストビーフについて話そうとしたことはすっかり忘れ、ローストビーフという名称を思い出しただけで満足してこの会話は終わった。
 
ほかにも地球温暖化についてや、人間は見た目じゃないとか言うけれど男を選ぶ時には価値観や生活感が最も表れる服装と髪型に大いに着目すべしなどという建設的な議論もした。へべれけになりながら。
 
そして「調味料の中で一番汎用性の高いものは何か」という議論が白熱しすぎて友人はスマホを紛失し、終電を逃した。